すきっ歯は、歯科用語で「空隙歯列弓(くうげきしれつきゅう)」といい、歯と歯の間が開いている状態のことを言います。

とくに前歯の間に広くすき間がある状態を「正中離開(せいちゅうりかい)」と呼ばれています。

不正咬合のひとつなのですが、実はナチュラルな美しさを大切にするフランスでは、上の前歯にすき間が空いているすきっ歯は「幸運の歯」とも言われているのです。

でもやっぱり見た目が気になるすきっ歯。
見た目だけじゃなく、すきっ歯は話すときに空気が漏れるため、サ行・タ行が発音しづらく滑舌が悪いのもすきっ歯が起因の場合があります。

すきっ歯になる原因と治し方

「すきっ歯は自力で治せる」「1日ですきっ歯が治せる」とネット上に多く書かれているので、「どんなすきっ歯でもすぐ治る」と誤解をされている方がいらっしゃいます。

すきっ歯になる原因によって、最適な治し方と治療期間・治療にかかる費用は異なります。

原因その1 上唇小帯

上唇小帯とは前歯の上側歯茎の中央にあるスジのことです。

上の前歯と前歯の間に上唇小帯が入り込むことが原因で、すきっ歯(正中離開)になる場合があります。

乳幼児期には上唇小帯が太く、顎が成長していくにつれて上唇小帯が上のほうに移動します。
上唇小帯が移動することで前歯のすきっ歯も自然と治っていくことが多いので、乳幼児期にはあまり心配する必要はありません。

成長してからも上唇小帯が前歯の間に挟まっている場合は、上唇小帯がすきっ歯の原因かもしれません。この場合には上唇小帯切除術の治療を行います。
術後、子どもは永久歯の生え変わり具合によっては自然とすきっ歯が治っていくこともあります。歯全体の噛み合わせを確認しながら、必要に応じて矯正治療で歯のすき間を狭くしていきます。

原因その2 一部の歯だけ小さい(矮小歯)

乳歯から永久歯に生え変わったときに、平均的な大きさよりも異常に小さい歯を矮小歯(わいしょうし)と言います。
矮小歯の形は、長細くなっていたり、通常の形ですがサイズが小さかったりなどさまざまです。

一部の歯だけ小さい矮小歯が原因ですきっ歯になってしまった場合、いくつかの治療法があります。

  1. 歯を動かす矯正治療
  2. 歯を削ってセラミックをかぶせるクラウン
  3. 歯を削って薄いセラミックを表面に貼り付けるラミネートベニア
  4. 歯の表面にプラスチック素材のレジンを塗って歯の形を整えるダイレクトボンディングやコンポジットレジン

2-4は小さい歯を大きくする方法(補綴、といいます)です。
「1.矯正治療」をやって矮小歯の位置を決め歯全体の噛み合わせを整え、そのあと「2.クラウン」で矮小歯を大きくする、といった組み合わせで治療を行っていくことが多いです。


歯全体の歯並びや噛み合わせをみて、治療後に問題が起こらないかを考えて治療法を選ぶことが大切です。

原因その3 歯の本数が足りない、生えていない歯がある

生まれつき歯の本数が足りなかったり(先天欠損)、骨にとどまって歯が生えてきていない埋伏歯があったりなどが原因で、すきっ歯になることがあります。

歯の先天欠損では、インプラントで差し歯を入れる治療をしてすき間を埋め、すきっ歯を治していくことがあります。

埋伏歯の治療では、骨の中でどのような生え方をしているかによりますが、抜歯や手術が必要になる場合があります。
専門的なスキルとしっかりとした検査が必要になります。

原因その4 顎が大きい

歯の大きさに対して顎の骨格が大きいと、歯がきれいに並べずすき間ができてしまい、すきっ歯になってしまいます。

顎の大きさが原因のすきっ歯を治すためには、ワイヤー矯正治療マウスピース型矯正をすることが多いです。

子どものすきっ歯は、第1期治療(6歳頃、前歯が永久歯に生え変わる頃)のタイミングで治療を開始できれば、あごの成長をコントロールした治療ができます。
→くわしくは「子供の矯正治療」をご覧ください。

原因その5 歯を舌で押す舌癖

とくに前歯の裏側に舌を押しつける癖が原因で、前歯がすきっ歯になることがあります。

子どもの場合は舌癖を治すトレーニングをすることで、自然とすきっ歯が治ることもありますが、大人の場合はなかなか舌癖は治りません。

矯正治療をしても、癖が治らないと後戻りしてしまう傾向があります。

舌癖が原因のすきっ歯を矯正で治すときには、裏側矯正治療が向いているかもしれません。
歯の裏側にワイヤーを取り付けるため、舌でワイヤーを触ることに違和感があり、自然と舌癖が治る方もいらっしゃいます。

原因その6 歯周病、加齢、歯が抜けたまま放置

歯周病がひどくなると歯茎が下がり歯がグラグラしてきます。そのまま歯周病をほうっておくと歯が抜けてしまいます。
またむし歯などが原因で歯が抜けてしまうこともあります。

歯医者での治療を途中でやめてしまうなど、歯が抜けたまま放置していたことが原因で、歯が空いている部分に動いてすき間ができ、結果的にすきっ歯になってしまう方もいます。

加齢もすきっ歯の原因のひとつです。
加齢とともに歯茎が下がっていき、歯の根元が表面化するにつれて歯と歯のすき間が広がっていきます。

歯周病やむし歯で歯が抜けていることが原因のすきっ歯の場合、まずは歯周病やむし歯の治療から始めましょう。
抜けている部分にはインプラント等差し歯の治療をしていきます。

歯の周りの歯周組織が健全であれば、何歳でも矯正治療は可能です。
加齢が原因のすきっ歯も治せます。気になる方は歯科医に相談をしてみてください。

残念ながら「すきっ歯は簡単に治せる」と勘違いをしている歯科医がいることも事実です。

まずはすきっ歯になっている原因を、検査とヒアリングでしっかり診察したうえで、最適な治し方・治療計画を提示してくれる歯科医を選びましょう。

ささくら矯正歯科クリニックは、公益社団法人日本矯正歯科学会認定医・指導医・臨床指導医である医師が診療を行っています。
甲北信越矯正歯科学会にも所属しており、地元・新潟県で学術研究、矯正臨床、情報交換を行っているため、最新の情報を常に持ち合わせています。

精密な検査と患者さまの習慣やご要望をしっかりとお聞きしたうえで、患者さまにとってすきっ歯を治す最適な治療法は何かを考えご提案いたします。